2014年10月18日

鍋の季節

以前急病で入院したことがある。このブログで以前にも書いた。
消化器系の病気で入院前後も合わせて2週間ほぼ絶食となった。点滴のおかげか、そもそも食欲がわく病状でなかったためか、空腹に悩まされることはなかった。
空腹ではないのだけれど食べ物のことは考える。人間は空腹ゆえに食べるだけではなく頭で食べているのだなと身をもって体験した。

別に足腰に問題があるわけでなく、寝ている必要もなかったので点滴をぶら下げて食堂(食事時間以外は面会・休憩スペースになる)にいることが多かった。ここには図書コーナー(?)があった。図書というと聞こえがいいが、要するに入院患者が見舞い等で持ち込んだ本・雑誌を置いていったのを病院スタッフがまとめておいてくれたのである。
そこにあろうことかあるまいことか、美食漫画として名高い美味しんぼのコミックスがそろっていた。食事制限で空腹に悩む患者もいるだろうにどうかとはおもう。空腹ではないが味わうという体験に飢えていた私は隅から隅まで読んだ。
不思議なもので漫画の上で京極さん(お金持ちの人)が「なんちゅうもんを食わせてくれたんや」と感動するシーンにうむうむと共感するとなんとなくこちらも満足するのである。

まぁ美味しんぼとの接点はそんなもの。

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さて本題はここから。
美味しんぼの作品のなかでしゃぶしゃぶ・すき焼きが登場する回がある。
しゃぶしゃぶ・すき焼きを出す老舗で海原雄山が激怒する話である。牛肉を食わせる方法として最低だ、死んだ牛が浮かばれぬと罵倒するのである。
しゃぶしゃぶ・すき焼きといえばおいしいごちそうという代名詞のような扱いであるのだが、この話を読んでそうだその通りだと共感したのである。
「死んだ牛が浮かばれぬわ」と私も言いたい。世間は美味しいごちそうだともてはやしているのでそう考える自分がおかしいのではなかろうかと遠慮していたのであるが、海原雄山が言うのであれば私も堂々といってよかろう(そうか?)。

すき焼きは大嫌いだ。
関西風であると焼いた肉に砂糖と醤油をかける。なんの調製もせず砂糖と醤油。関東風は割り下を使うからまだましだがやはり味は甘辛で濃い。薄い肉なのにこれでもかと火を通す。それに生卵をくぐらせて食べるというのだから、「牛肉嫌いなのか?」と言いたくなる。そんな味の濃いもので消さないと食えないのか?

しゃぶしゃぶもひどい。
テキトーな店だとしゃぶしゃぶもすき焼きも同じ切り方の肉であるが、しゃぶしゃぶ用はより薄く切るのが本来であるようだ。
これをぐらぐらと沸き立つ鍋に入れたら一瞬で出し殻になる。すき焼きに比べてましなのはいいスープが出るかもしれないことだろうか。
また、しゃぶしゃぶの鍋自体には塩味がついていないのが普通だ。それでポン酢なりゴマダレなりで食べるのが普通のようだ。
ポン酢というのがこれがひどいもので、よっぽどこだわっていない限り、砂糖や調味料がたっぷり入っているくどいものになる。
ゴマダレなんぞというものは甘くて濃厚で肉の味を消すために存在しているとしか思えない。あれでは肉だろうが油揚げだろうが変わるまいに。

この二つの鍋料理を否定してしまったが、その他の鍋料理も不満がないではなく、やはり鍋は自宅でやるのが一番と思うのである。

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すき焼きについて、味の組み立ての基本が砂糖+醤油なり、割り下である限りなんの救いもないと思う。生卵をくぐらせるのも理解しがたい。醤油と生卵の相性はいいと思うが肉の味を引き立てるものではない。うどんならいいのではないか。讃岐には釜玉という名作がある。鍋の締めにうどんを入れて、それを卵と絡めて食べるのはいいように思う。

しゃぶしゃぶは改良する余地があるように思う。
肉が薄いこと、ぐらぐらと煮たてること、ポン酢がまずいことを改良すればいけるのではなかろうか。
で、手前味噌だが拙宅風しゃぶしゃぶを紹介したいのである(自己満足)。
ただ、自宅でやる鍋だ。別にグルメで高級食材に走るものどうかと思うし、面倒もこまる。お金も手間もいとわない人からみたら突っ込みどころ満載なのはご勘弁。

まず食材の調達。
肉は赤身。メジャーなところでは肩ロースとかモモであろうか。牛でも豚でもよろしいが、両方あるとよりよい。基本的に国産を良しとする私であるが、牛肉については国産=霜降り上等ということになってしまいよろしくない。輸入牛肉か国産でも安くて赤身が濃いのがよい。銘柄牛より乳牛の廃用牛の方がいいように思う。
厚さはしゃぶしゃぶ用ではあまりに薄い。牛丼とか生姜焼きに向くような厚みがよい。いわゆる切り落としで充分だ。

野菜はなんでもいいのでたっぷり用意したい。お勧めしたいのは大根である。
大根をよく洗う。輪切りにして皮をむく。皮は捨てない。刻んで野菜の一部として食べると美味しい。
鍋に輪切りにした大根を敷き詰める。これはなかったものとして忘れておくのである。
昆布だしを大根がひたひたになる程度に入れる。その時点で鍋の半量程度に収まるような深さの鍋がよい。昆布だしが面倒なら粉末の即席のだしでも結構。火を通す程度に煮込む。関東のねぎを使うなら青いところを入れると風味がいい。
これで下準備完了。

食事前に鍋に日本酒をだばだばと入れる(ゆえにお子様向きではない)。醤油もほんの色づくくらいに入れる。
ここからは煮たてない。せいぜい出汁がゆらりとする程度。
煮たてないので野菜に火が通るのも遅い。計画的に早めに入れる。

器に醤油とかんきつ類の汁を半々くらいで入れる。面倒なら焼酎用として売られているレモン汁の大瓶をつかえばよろしい。
そのままでは濃すぎるので食べる直前に鍋のだしを入れて薄める。

肉を入れる。煮たてない上に肉が若干厚いので火の通りは遅いがそれでも数秒で肉の色が変わる。そうしたら器にとって食べる。野菜も食べる。

だしが減ったら日本酒を足す。若干醤油も足していい。肉を煮て野菜を煮て日本酒を足してとしているうちに鍋の中は黄金のスープに変身している。

さて、忘れておいた大根はなべ底でいい具合におでんに変身している。翌日適宜具を足しておでん鍋として活躍してもらうわけだ。

と、この季節の鍋は一晩では終わらない。
posted by Mozzo at 17:23| Comment(0) | TrackBack(0) | うまいものの話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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