2015年11月05日

肉は危険なのか?

「世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)が、ハムやソーセージ、ベーコンといった加工肉に高い発がん性が認められ、大腸がんを発症するリスクがあるとの調査報告を発表し衝撃が広がっている。」
のだそうだ。産経新聞から引用。

50グラムとるごとに18パーセントリスクが高まるという。そういわれたらびっくりする。加工肉に並んで赤身肉も危ないという。
一方で「あいまいなデータに基づいており根拠が薄い」と業界団体は反論しているそうな。

IARCの発表はそれを信じるなら単に科学的なことを言っているだけであり、受け取る側の姿勢が問われる問題である。
18パーセント高まるといわれてしまうとびっくりするが何に対して18パーセントなのか。
素直に読むなら加工肉を食べる習慣がない人に比べて18パーセントと言っているに過ぎない。
ではその加工肉を食べる習慣がない人とはどういう人なのか。酒ものまない、たばこも吸わない、その他加工食品も食べないし都市にも住んでいない。そういうリファレンスのような人が統計学上有意なレベルで存在しているとは思えない。
いるとしたら単なる健康バカで別の理由で健康を害しているに違いない。

結局は、様々な調査統計から比較をして、観念的に「リファレンス」を作る。そこに対して18パーセントの危険を言っているのではなかろうか。

リファレンスとなる人たちの大腸がんのリスクはどの程度か。ある識者の話では(ラジオで聞いただけだ)千人に一人もいないらしい。そこに1.18をかけるわけだからあたふたするような数字ではない。
ほかに気をつけねばならんリスクはいろいろある。がんで死ぬのも交通事故で死ぬのもいやであることは同じだし、がんで死ぬ分には「遺言」を残す時間があるから交通事故よりましともいえる。

業界団体の反論もあまり意味がない。根拠があいまいだというならあいまいでない根拠に基づいて反論すればいいのだが、その根拠まではないらしい。うちの業界に不利なことは認めないもんねでは説得力に欠ける。

さらに新聞記事によれば、加工肉をとる人のリスクがあることは統計的に明らかだがどのような仕組み(加工肉に含まれる成分とか)で変わるのかはわからんとも言っている。つまり帰納的に統計で「加工肉を多くとる人のがんリスクは高い」といえても演繹的に「加工肉にはこういう成分が含まれ、こういう働きをするので危険です」とは言えてないのである。

近代の加工肉に含まれている添加物がいかんのか、古来の加工肉にも含まれている何らかの物質(保存することによって増えるなにか)がいかんのかさえ区別がついていないのである。300年の伝統を守り岩塩だけで作りましたという生ハムとその辺で売られている怪しいソーセージ(と称するもの)とはちがうんだろうなとなんとなく思っているが、そこを区別する話は出てはいない。
伝統的だから安全ということにもならないが、そこに違いがないとも言えないわけで、なんともあいまいな状況である。

さらに因果関係もはっきりしない。
「加工肉を多くとるとがんのリスクが上がる」と言っているだけで「加工肉をとらないようにすればがんのリスクが下がる」とは言っていない。大変に科学的な態度だが一般人は曲解するだろう。

演繹的な真実を暴くのにはもっと時間がかかる。とりあえず統計的にこうだということには意味がないわけでもない。
しかし、加工肉を食べる→XXXという物質が腸内で作られる→XXXがYYY細胞を刺激してがんになる、とか単純な結論ではない可能性も多々ある。
加工肉を食べる人はXXXをする傾向がある(たとえば喫煙とか)→XXXはYYY細胞を。。以下略というようなことが結論かもしれない。
加工肉を食べることではなくそこにつながる別の習慣がいかんのかもしれない。可能性として。
当然前述のとおり、伝統的な加工肉と大規模に製造される近代的なものでは添加物や製造工程で違うのかもしれない。
ハムやベーコンをやめても別の生活習慣がいかんのかもしれないし、伝統の生ハムまでやめる必要はないのかもしれない。
何度も言うが、それより心配する必要があるものが別にあるのではないか。

痩身を中心に赤身肉をとるメリットが言われている。
肉質を考えないと脂肪のとりすぎになるからあえて赤身肉。
現実に肉をとらなすぎる高齢者には赤身肉もバランスよくとろうといわれている。高齢者になれば脂肪やたんぱく質の必要量が減るとはいえ必要なのである。
安直な食事をしているとどうしてもでんぷん質に傾く。安直にコンビニおにぎり。うまいけどね。即座にエネルギーになるが、それだけではいかん。でんぷん質は大事であるが偏ってはいかん。

なるほどたんぱく質を意識的にとると体調が変わるようにも思う。感覚的なものではあるが、バランスって大事だと思わされる。別に赤身のステーキ肉を食べるだけが解ではないが、意識的にとらないと不足していたんだと思わされる場面が多々ある。
だからと言ってがんのリスクを無視していいとまでは言わない。
はてさて。

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そもそも人間が「理想的な」生活をしてきたことがあるのだろうか。そんなやつが今までいたのだろうか。

加工食品とか大気汚染とか過剰な医薬品とか、とにかく現代的な要素というのがある種の健康追及宗教の人たちにはお気に召さないらしい。
ではそういうものに「毒されていない」人ってどこにいるんですかと思う。
どこぞの未開の原野に住む現代文明と隔絶された人々ですかね。
でもその人たちは病原菌や寄生虫に悩まされ、少なくとも日本人ほどの平均余命を果たしていない。早く死ぬ。
健康オタクがあれもこれもと偏執狂的に追求した生活もあろう。その末路はなんだろうか。本人は恵まれた人生だったと思うだろうが傍から見てどんなに損なわれた人生だっただろうか。健康オタクがどこまで長生きしたのか統計を見たいものだが。


長生きだけが健康じゃないとかいろいろ言い分があろうがそこはもう個々の価値観の世界だ。
チューブにつながれて長生きするのと、元気で60歳そこそこでコロッと死ぬのとどちらが幸せか。価値観だ。私はチューブにつながれても世界の行く末を見たいね。見れるなら。

活動家ではない一般人としてこのニュースを正しく受け止めるあり方はなんだろう。
まずは極端に走らないことだ。
加工肉や赤身肉を食べて即死するわけじゃない。
高度成長期に怪しげなものを食べてきた世代はそれなりに生きてそれなりに死んでいる。全員が大腸がんでばたばた死んでいるわけじゃない。焦る必要はない。
一方で毎日のようにステーキを食べたりでっかいハムを食べたりという生活もしてこなかった。それらは比較的高価なものでごちそうだったからだ。
基本を日本人がこれまで食べてきたものに据えて、たまにごちそうとして加工肉や赤身肉を食べることは大した問題にならない。伝統的な日本食は若干動物性蛋白質や脂肪に欠ける面もあるのではなかろうか。その程度に食べるなら何の問題もなかろう。

ニュースは肉好きが「絶望だ」などと言っていると報じたいわけだが(面白いから)、乗っかる必要は全然ない。
posted by Mozzo at 21:29| Comment(0) | TrackBack(0) | まじめな正論! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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