2015年07月20日

お前はいったい何を私に食べさせたいのだ by 海原雄山

うどんが好きだ餅が好きだコメが好きだと、このシリーズでは炭水化物に傾倒する好みを披露してきた。
その時の気持ちで食べたい炭水化物は変わるのだが、やっぱり米、白飯は安定して上位にランクインだ。無性に蕎麦ということもあるのだけど。

ご飯がおいしいことを売りにしている飲食店があるとつい足を向けてしまう。
曰く、有名銘柄米を使っています、いや契約農家から仕入れています、水は京都の湧き水です、いや高度処理したクラスターがイオンのどうのこうのの水ですなど材料にこだわる方向がある。
また、羽釜で炊いてます、土鍋で炊いてます、お櫃に入れますなどなど、調理法にこだわる方向もある。
みなうまそうである。事実うまい。

先日もこだわりの米・お櫃に入れて提供というのが売りの店を見つけてつい入ってしまった。
お櫃にご飯が入り、おかずが脇に付くか、ご飯の上に盛り付けられるかである。これで安くて千円から豪華なおかずだと二千円程度というところか。
むろん白飯に文句はない。上出来であった。

これが安いか高いかはわからぬが、真に客が食べたいものを出しているのかという疑問があった。
簡単に言えば、おかずが豪勢すぎるのである。
やれマグロだエビだと高級海鮮やらナントカ地鶏だとかとセットになっている。いちばん地味なおかずでも鰈の煮つけであった。
もちろんこういう献立も必要だ。美味しいおかずとセットで食べるおいしいご飯。これは当然美味しい食事。それなりにバランスもとれている。正しい。

だが、時に白飯に煩悩したいこともあるのだ。
だいたい、たっぷりのおかずではそれだけで満腹になってしまい、白飯はそれほど食べられないではないか。白飯をたっぷり食べたいのである。若い人ならいざ知らず、この定食のおかずを食べきったらご飯は一口でいい。中高年はそんなもんだ。
塩の効いたたらこ一片、焼鮭一片、海苔の佃煮、なめたけ、イカの塩辛、鰹の塩辛などなど。味が濃いものご飯に合うものを小皿にちょいとあればよい。それで白飯をたっぷりと食べたいのだ。
なんと「追加トッピング」としてそれらがメニュにある。なら白飯と「追加トッピングのみ」が私の望む今夜の食事だ。
たまにはそういう食事もしたいではないか。そんな煩悩を刺激するうまい白飯を出しておいてたっぷりのおかずを食わねばいかんというのは矛盾ではないか。
いや、おかずを食えと強制されているわけではないが、料理を残すという選択肢は私の中にない。

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店側の事情は分かるのである。客単価である。
これが持ち帰り店ならちがう。商品ごとに価格が高かろうが安かろうが粗利がそれなりに確保できていれば問題ない。白飯だけの客も歓迎だ。店員が注文を待っているのにうーんと悩んでいる客が迷惑だ。
しかし、外食店の場合客単価を上げねばならない。座席というものがあって、どんなメニュを頼もうとも一定時間占有するし、座席の数も上限があるのだ。固定費みたいなもので、粗利を上げるには客単価を上げねばならない。よって豪華な方向に傾いてしまう。むろん豪華すぎれば躊躇する客も多いのでそのさじ加減が企業の腕だ。

しかしだ。その店の売りである白飯を最高においしく食べたいと言っている客が望むものが食べられないというのはどうにも納得いかない。

これが全くの個人経営の店であれば、常連となって日常的には高いメニュを食べて、そのうえで「今日はわがまま言わせて」は通用するかもしれない。
また、企業経営の店でも柔軟な店であれば「煮魚定食の煮魚抜き、たらこ佃煮トッピング追加」なんてことができるかもしれない。煮魚とトッピング交換で定食と同じ値段ね、で通ればラッキー。煮魚定食+トッピングでより高い可能性あり。

ま、客の側からごり押しすれば食べられないものではなかろう。もちろん少なくとも安めのメニュと同じ値段は払う。
しかし、シンプルなおかずで白米をたっぷり食べるというスタイルを店の側から提案しないのはどうかと思う。
むろんちょっぴりのたらこやら佃煮やらで海鮮やら煮魚やらと同じ値段を取るのは体裁上むつかしいのかもしれない。
だがやればいいと思う。煮魚定食と同じ値段で。大きな煮魚ではなく小さな珍味の小鉢だけですが、これがご飯を楽しむ最高のプランなんです。と。こういうのお好きでしょと。
もう、飲食店は食材や調理の原価率で値段を決めるのをやめればいい。献立の魅力・鮮烈さで値段を決めればいいと思う。居酒屋で最高に高い料理は塩むすびでもいい。それを食べる金がない奴はマグロのトロを食べていなさいと。
考えてみればテキトーに盛り付けられたマグロのトロを自分で用意しようとするなら、スーパーに行けば買える(ランクというものはあるでしょうがね)。最高のコメと絶妙の炊き具合の白飯で、塩加減完璧の塩むすび、きりりと冷えた吟醸酒と一緒に。これを自分で用意するなら、時給も考えるとスーパーのマグロのトロを超えるかもよ。
たとえば塩むすび1〜2個分の白飯を炊くわけにはいくまい。最近の炊飯器は優れていて少ない米もうまく炊くというが、やはり美味しく炊ける量というものがある。
食材の値段やら手間やらは別にして、これを提供できるのはうちの店だけですぜ、それなりの代金払ってもらいますぜで道理は通っているように思う。

その点において、蕎麦屋の盛り、ざる、蒸篭といったシンプルなメニュを訴求するというのは理想である。店によっては素材の単価と比して割高メニュだ。これでずっとやってきているのだから白飯にできないはずがない。

豚カツをおかずに豚カツ定食と、梅干しにイカの塩辛をおかずに梅イカ(うめーか!?←ちょっとうまいダジャレを言ったつもり)定食と同じ値段でいいのである。
それはおかしいという人は豚カツ定食を食べればいいのである。

思えば客単価とか回転率とか市場占有率とか商売にはいろんな指標がある。理解できないようなむつかしい指標もある。
それは正しいんだろうけどもっと客がほしがっているものを出すという原点に立ち返ってみたらどうかとおもう。

とりあえず、炊き立てご飯に卵納豆ネギたっぷりが牛丼屋でしか食べられないというのは間違っていると思うのである豚カツ定食800円、納豆定食1000円でも私は納豆定食を選ぶね。

ちなみに吉野家では近年単品で納豆が頼めるようになった。時間帯は問わない。
顔なじみになったうえで、単品ごはんと納豆、トッピングネギ玉、トン汁、漬物で並の単価を大きく上回ればこういうわがままも許されるだろう。やったことがある。私はここに冷酒を追加するので単価はその辺の一般客とは違うよ!←自慢することか。

posted by Mozzo at 21:35| Comment(0) | TrackBack(0) | うまいものの話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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